住民訴訟のうち先行する1件の判決が確定しました。異例の内容!
・日野市に対して、川辺堀之内土地区画整理組合への助成金の返還を求めた住民訴訟の判決が出ました。
・原告の要求どおり、日野市は区画整理組合に対して助成金の返還請求を行いました。
・判決の内容は「却下」でした。
・日野市が区画整理組合に対して助成金の返還請求をしたことにより、裁判が「不要」となったからです。(目的の1つは達成したことにもなります)
【異例の判決】
・訴訟費用の負担→「原告の訴訟費用は被告が負担する」
[判決は却下なので極めて異例]
「原告らの訴訟活動を通じて本件請求が実現したこと等に鑑み・・」という判決文。
判決は「却下」だが、事実上の「勝訴」のような判決となった。
【裁判の内容】
原告の住民が日野市を相手に争ってきた川辺堀之内土地区画整理組合に対する助成金の返還の請求を求める訴訟(住民訴訟)は、さる2023年11月16日に地裁判決が言い渡されました。
この裁判は2020年に原告住民による「日野市が税金で支払ってきた助成金は、組合の科目偽装(不正な会計処理による経費の水増し)による不当なものなので、日野市は助成金の交付決定を取り消して、組合から助成金を返してもらってください」という訴えです。
(原告は裁判では最終的に2012(H24)年度から2017(H29)年度まで〈以下「この期間*」〉に助成した2億9500万円を返還請求するように求めました)
しかし日野市は、元理事長相談役の■■氏が刑事事件で有罪となった2018(H30)年度の助成金の返還請求をしたものの、この期間* については「組合に科目偽装があって市の助成金の交付決定に影響を及ぼしていたとは断定できない」と主張し続け、助成金の返還請求を拒んできました。
ところが今年の6月、日野市は裁判所から「この期間* の助成金の交付決定を取り消さないのはなぜですか? 判決を出すことは裁判所の仕事ですけど、判決が出る前に日野市が自ら判断する余地があるのではないですか?」と問われると、7月に日野市はこれまでの主張を一転させ、この期間* の2億9500万円の組合に対する助成金交付決定を取り消し、組合に対して返還請求を行いました。
これによって11月16日の判決は「日野市はもう組合にこの期間* の助成金の返還を請求したのだから、原告の求めは実現されたので、もうこの訴えをする必要はありません」との理由で、「訴えの却下」(原告の敗訴)となりました。
しかしこの判決では、一般的に敗訴した側が負担する「訴訟費用」を日野市が負担することとしました 。 それは「この裁判を通じて日野市が事実を認識して組合への請求に至った」と裁判所が 認めたからです。
判決の見かけ上は「却下」ですが、裁判を通じて原告団の主張が実現されたことは、実質的には原告の勝訴だと言えます。
ところが、判決が出た後も日野市はホームページで「原告の請求は却下された。今後も組合が事業をやり遂げるために必要な支援をする」とコメントしています。
この裁判を通して不誠実な対応をしてきた日野市に対して、私たち住民は、今後も市民の税金が適正に使われることをしっかりとチェックしていかなければなりません。
【裁判に対する日野市の姿勢・その酷さ】
日野市は、この訴訟の中で、日野市の負ける範囲、つまり、組合が日野市に返還する金額をできるだけ小さく小さくすることだけを目標として訴訟活動を行ってきました。そんな日野市に負けないよう、我々は粘り強く調査を行いました。そのような我々の活動によって、助成金の不正が少しずつ明るみに出るにつれて、日野市は、少しずつ主張を後退させていきました。
日野市は、負けを小さくするように頑張っていましたが、裁判所から請求認容判決(我々の勝訴判決)が示唆され、結審見込みが告げられると、日野市は敗訴判決を免れるため、組合に対し、請求書を送り、形式的に請求を行いました。
本日時点で、騙し取られた助成金は戻ってきていません。
こんなことをしてきた日野市のことは、全く信用できないし、許せません。
日野市は、今回の判決について、判決が出た当日に、「勝ちました」と言わんばかりのプレスリリースを出しています。しかし、上に書いたような経緯を隠しています。
それだけでなく、判決文そのものを公開していません。
判決文で裁判所も認定していますが、日野市が、組合に対し、請求を行ったのは、我々の訴訟活動による結果です。2ヶ所(11頁1行目以降と12頁15行目以降)でそのように書かれています。
ここまでの認定をされているのに、却下判決となってしまったことは残念でなりません。
ただ、地方自治法の解釈として、却下判決以外無いってことも無いと思うので、その点は裁判所の判断に不満を持っています。なので、控訴することになると思います。
このような経緯と、今回の判決内容を、広く皆さんに知ってもらいたいです。
(山口俊樹 弁護士)